大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)8045号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで土地賃貸人は、賃借人に、賃貸土地を引渡したのちその賃貸期間内は引き続き賃借人をして賃借土地を使用収益させる義務を負い、賃貸期間内にこれを第三者に譲渡し、これがために賃借人が賃借土地を使用できなくなつた時は、賃貸借契約は履行不能により終了し、賃貸人は債務不履行の責を負い賃借人が蒙つた損害を賠償しなければならない。しかし、土地所有者たる賃貸人が、その所有土地を他に譲渡することは、もちろん土地所有者の自由であつて、賃貸借契約も右譲渡じたいによつて履行不能になるのではなく、賃借人が現実に該土地を明渡さざるをえなくなつた時に履行不能となると解する。けだし賃貸借契約において賃借物が賃貸人の所有であるか否かはその要素ではなく、他人の物についても賃貸借は有効に成立しうるものであるから、自己の所有土地を賃貸した賃貸人がその後該土地を他に譲渡しても、それによつて賃貸人たる地位を当然に脱退したものとして賃貸借関係を終了させうるものではないからである。

被告は、本件土地売却以前から、その附近の所有地を売却して居り、原告にも本件土地を売りたい旨を告げていたのであるから、原告としては本件土地が他に売却されることは予想しうべきであるのに、建物の登記は他に売る時等のほか必要ないと思い、漫然と保存登記手続を怠つていたこと、庄子が本件土地を買い受けたのちも原告と庄子との間に賃貸借の交渉が続けられたが、原告において権利金の支払い、あるいは被告の居住そのものには不都合のない庭の一部の返還を拒否したため賃貸借が成立するに至らなかつたことが認められ、これを覆す証拠はない。そして過失相殺の認められる理由は、結局債権者、債務者間の損害負担の公平を期するにある以上、右認定のごとく原告において建物の登記をしたり、あるいは新地主との賃貸借の交渉においてわずかな妥協さえすれば、ひきつづき使用することができたのにこれらのことをしなかつたのはいづれも原告側にも過失があつたものといわなければならず、原告の蒙つた損害中被告の賠償すべき額は右の事情を較量するとその五割である金一、二〇六、三五〇円に減ずるのを相当とする。(岡成人 内藤正久 筧康生)

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